たった1時間で大絶景 “登山コスパ”良すぎの小浅間山

 浅間山に寄りそうような小さな山、その名も「小浅間山」。その名を聞いた当初、安易な名前だなーと思ったが、標高約1000m差で浅間山に寄りそうような佇まいは、たしかに小浅間、もとい”子”浅間。地元の人はそのかわいい様子に親しみを込めて名付けたのだろう。標高1655m、登山口から1時間もかからず登頂できる小さな山だが、山頂の西峰から眺める浅間山が絶景という、いわゆる“登山コスパの高い山”。 ときは2月22日、思い立ったが猫の日、じゃなくて吉日。冠雪した浅間山を目指して絶景スポットへと行ってみることにした。

小浅間山の西峰から望む浅間山。こんなに近所なのに知らなかった、まさに「未知との遭遇」

”思い付き登山”ができる手軽さ

 小浅間山への登山道入口は、軽井沢から北軽井沢に向かってロマンチック街道(国道146号)を登り切ったところにある「峰の茶屋」の向かいにある。軽井沢のセカンドハウスから約10kmほどで、時間にしてクルマで15分程度。鬼押しハイウェイと白糸の滝への道等が交わるやや交通量が多い地点で、存在を知らなければ気付かなそうな道が森の奥へと続いている。そばには駐車場というにはちょっと狭い無料の駐車スペースがあり、この日は我々の他に3台ほどのクルマが利用していた。

登山口にある案内。浅間山と小浅間山はまさに親と子のような位置関係

 登り始める地点で標高1400mほど。軽井沢の自宅を出た時点では雪はなかったが、小浅間周辺にはまだまだ雪が残っていた。この辺は標高が200m変われば季節も変わる。溶けかかった残雪は締まっていて足がとられることはないが、ところどころ滑りやすくなっているので、この時期は軽アイゼンやスノースパイクを備えておくと心強いだろう。

今回の山行は軽アイゼン(画像上)と、さらに簡易的なスノースパイクで。どちらもモンベル製

 登山道に足を踏み入れると、そこはもう森の中。入り口周辺のクルマの往来の音が遮断され、ひっそりと静まり返る。風で枝がこすれる音、鳥の声。足元の雪に似合わない温かな日差しに、冬と春の境目にいることを感じた。

 登山口から小浅間山の頂上までは約2km。高低差もさほどなく、迷いようもない1本道がまっすぐと続いていく。なるほど、これは登山ビギナーはもとより、初めての雪山登山でギアの使い心地をチェックしたりするのにも良さそうだ。

整備されている一本道。初心者でも歩きやすい

落雷に遭ったように豪快に朽ちた大木

 歩き始めて30分ほどで、今まで頭上をおおっていた樹木がなくなり、一気に視界が開ける。それとともに突然、急斜面の上りが始まる。え~…と思うが、これはウォーキングでなく登山。さっきまでの平坦な道がサービスなのだ。

樹林帯を抜けると急に登りが始まる

 日当たりが良く、風も吹きつけるため残雪もまばらな山肌。砂や小石があるザレ場では、むしろ軽アイゼンがあると歩きにくい。極力雪が残っている場所を選びながら、アイゼンの爪を立てて登っていく。

 木や岩など風を遮るものがないため、風の強い日は猛烈に吹き付けられ、近くを歩いている仲間の声も聞こえないほどになる。この日も比較的風が強い日だった。

 急登を歩くこと15分ほど、小浅間山の頂上に到着。振り返ると冠雪した浅間山がすぐ間近に迫っていた。

 「うおおおお!…」と言いたいところだが、実は斜面を登っている間、何度か振り返ってしまい、浅間山の姿をすでに確認してしまっていた。これから初めて登るという方は、どうか頂上の立て札まで後ろを振り向かずに登り切って、ぜひまっさらな感動を体験してほしいと思う。


小浅間山のピークに登頂! 読みにくいけれど「小浅間山」と書かれている。頂上はいっそう風が強く、実はこの標識も倒れていた

 小浅間山は「溶岩ドーム」といわれるドーム状の地形をした山。約2万年前に起きた浅間山の噴火で山頂から4kmほど離れたこの地で噴火が起こり、その噴火口で固まった溶岩が盛り上がって作られたのが小浅間山となったのだそう。自分の身体の一部からぽこっと盛り上がった新たな山。そう考えると、小浅間は浅間山に寄りそう子供というよりは、”おでき”のような存在といったほうが合っているのかもしれない、等と足元の小浅間山を見ながら思った。

浅間山の絶景ポイントは山頂でなく「西峰」

 ピークをあとにして、さらに西へと進んで「西峰」を目指す。絶景ポイントとしては山頂よりも西峰の方が名高いのだそう。

もう一つのピーク、西峰を目指す

 吹きっさらしの山頂から、樹林帯の中へ入るとそれまでの強風が嘘だったかのように感じなくなった。それほど木の高さもなく、密集しているわけでもないが、これほど風よけ効果があるとは。

 一方で風の影響を受けず、陽も当たりにくいためか、山頂と違って雪も多く残り、まだまだ深さもあった。が、前を歩いた人たちの足跡が幾重にも踏み固められているので、それをたどれば足も埋まることなく歩きやすい。

前に歩いた人の足跡をトレースをたどる。他の動物の足跡も混ざってる?
小浅間山西峰に到着!

 歩くこと5分程度。樹林帯を抜けたところで突然視野が開け、再び浅間山が現れた。さっきも同じくらいの近さから見たはずの浅間山だが、山頂からの景色と違って視界を遮るものがなく、裾野を含めた全容が見えるせいか、迫力というか‟抜け感”というか、スケールが圧倒的に違った。確かに「絶景」と評されるだけのことはある。

展望台のようにせり出した西峰から望む浅間山

 冠雪した山肌はとてもなめらかで、陽の光を反射してまるで純白のシルクのよう。それを引き立てるなだらかで優しい曲線に、もはや浅間山を「女性」としか思えなくなっていた。

シルクのような雪をまとった浅間山
いつか稜線を歩いてみたいが…噴火の可能性がある限りは無理

 時計を見ると12時。小浅間登山の最大の目的、”絶景ランチ”の時間だ。といってもいつもの登山と変わらず日清のカップラーメンなのだが、これを雪山で食べるとなぜかとっっても美味しいのが毎回不思議だが、深くは考えないでおこう。

お手製のアルコールストーブと風防を使ってお湯を沸かす

カップラーメンは、中身だけの「リフィル」タイプを持参
完成! 月並みだけど、雪山&絶景は最高の味付け

ローカルマウンテンが近所にある贅沢

 絶景とランチを堪能したところで下山。西峰からそのまま斜面を下るが、やはり風を受け、陽あたりの良い斜面はあとかたもなく雪が消えている。こんな小さな山で、色々な表情をもつ山だ。

西峰から下山。風と日当たりで雪がまったくない斜面

 浅間山の存在が大きく、近くにありながら足を踏み入れたことがなかった小浅間山。東京にいた頃は、せっかく長野に行くならということで「名のある山」ばかりを狙っていたので、小浅間の存在を知っても「浅間山の近くにある小さい山」くらいにしか思っていなかった。

下山後、「Coffee House Shaker」で美味しいコーヒーとホットケーキをいただく

 この気軽さに行ける距離感でないと、登れなかった(登らなかった)であろう小浅間山。これからもリモートで軽井沢を訪れるたびに足を運んで、四季折々の景色を楽しんでみたいと思う。

 そしてこの浅間山界隈には、小浅間以外にもあまり知られていない(私が知らない)、魅力のある”ローカルマウンテン”が他にもありそうなので、その辺りもリサーチしてみようと思う。

 春に向けて軽井沢リモートライフが、ますます忙しくなりそうだ。

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